秋月謙吾「行政・地方自治」東京大学出版会

使い勝手が悪そうなので後回しにしてきたこの本を斜め読み。
欧米の理論を広く浅く紹介するのが目的なのか、このほんのよってたちアプローチと既存の行政学との関係や日本の具体的な事例についてはついでにちょっとふれるぐらいなので、どうも物足りない。また基本的に政府間関係に焦点を当てているからかしらないが、NPMやボランタリーセクター等については全くと言っていいほどふれられていないのも解せない。方法面で言えば、利益・制度・アイディアというおなじみの三つのIでさまざまなアプローチを統一的に説明しようとしたのだが、これもあんまりうまくいってないと思う。それぞれのIの関係がどうなっているのかが分からないので逆にバラバラになっている感じがする。

しかしそれでも面白いところはある。
イーストンの政治システム論にハーシュマンのモデルを対置させた図は綺麗だった。あれは使える。むしろこの構図で押しまくった方が統一感が出た気がするが。
地方政治・行政学の人から、ネオ・コーポラティズムやステーティズムといった議論に対して地方政府や地域の役割を強調するを聞くのもちょっと新鮮だった。

最近の日本を考える上では使い勝手が良い本だとは思わないが、理論についてはてんこ盛りなので文献ガイドとしてどうぞ。