サポティスタによればスペインで少年サッカーチームの監督をしながらスポナビでスペインリーグとスペインサッカーについてのコラムを連載していたあの木村浩嗣さんが日本に帰国して、「Footballista」という新しく立ち上げる海外サッカー雑誌の編集長になったらしい。
木村さんといえば爆発的なフリーランニングでおなじみの湯浅健二と並んでサッカーの独特の魅力を伝えてくれるすばらしい書き手だった。
なんといってもその論理的な文章が魅力的だった。例えばこのコラム。http://sportsnavi.yahoo.co.jp/soccer/eusoccer/spain/column/200304/0402kimu_01.html

サッカーには勝利の論理がある、と私は思う。私の勝利の論理とは、単純極まりない。
『勝つためにはゴールを多く決めることだ』⇒『ゴールを多く決めるためには多くのチャンスを築くことだ』⇒『多くのチャンスを築くためにはボールを支配することだ』。よって、『勝つためにはボールを支配することだ』という結論になる。
・・・
 短いパスを後ろからつないでボールの支配時間を長くし、攻撃する時間を長くする。相手にボールを与えず、シュートチャンスすら作らせないで、圧倒的に試合を支配して勝つ、これが私の描いている理想のサッカーだ。

まず理想を論理として表し、その論理を現実と照らし合わせて検証する。論理通りにいくときもあるが、必ずしもそうはいかないこともある。ここで引用した文章が載っているコラムはまさにこの論理が現実の前に敗北ー試合を圧倒的に支配しながら、カウンター数発で見事に撃沈ーしてしまった試合を論じものである。その試合を通じて、なぜこの理想の論理が敗れたのか、この論理は正しくないのか否かを反証を挙げながら冷静に検証していく。
他方で、例えばその次の回のコラムのように、理想のサッカーが論理的に勝利したときにはざまあみろといわんばかりに喜んだりもする。
http://sportsnavi.yahoo.co.jp/soccer/eusoccer/spain/column/200304/0416kimu_01.html

木村さんのコラムは、サッカーの一つの見方を論理的かつ情熱的に示してくれた。

そしてなによりこうしたサッカーの組織・戦術論だけにとどまらず、スペインの生活、イラク戦争やテロ反対のデモに至るまで、グラウンド内外幅広くサッカーのある生活というものを魅力的に描いてくれていた。
だからコラム連載終了は大変残念に思ったものだが、同時にこれだけの書き手だからほっとく人はいないよなぁ、帰国するからにはどこかのチームのコーチでもやるのかも、とも思っていた。
海外サッカー雑誌といえば写真ばっかりだとかミーハーだとかいうイメージしか頭に浮かばないのだけれども、いい感じの雑誌に仕上げてくれたらいいな。創刊号は試しに読んでみようかな。