ジョン・E・ローマー[著], 伊藤誠[訳],「これからの社会主義」青木書店
ローマーによれば、社会主義者は、
1,自己実現と幸福
2,政治的影響力、及び、
3,社会的地位、
 という三つのことに関する機会の均等を要求する。
ただし、社会主義者たちのなかでもこれら三つのうちのいずれを重視するか、すなわちそれぞれの可能な組み合わせに関する選好順位については意見が分かれる。
ここでローマーが社会主義者がこれら三つに関する機会の平等を求めるという命題を資本主義的搾取に対する倫理的批判−搾取理論を基礎づける根拠として用いていることに注意すべき。
ある種のマルキストが、ある人がその労働で生産するものは当然にその人のものであるという理由から労働者は搾取されているという命題によって資本主義を批判するとき、それは自由主義者と代わりがないことになるという。つまりその命題は自己所有の命題であって、それはノージックが述べているように現代的自由主義の第一公準ともなる。従って自由主義者が再配分的課税への批判の根拠としてこの自由主義公準を用いるとき、自己所有を資本主義への攻撃の基礎としているようなマルキスト福祉国家への自由主義への敵視をなぜ拒否するのか説明しなければなくなる。従って資本主義の批判、社会主義の擁護には自己所有の命題を批判し、平等主義の命題を擁護することが必要となる。