3月の半ば頃の話だが、久しぶりに両親にあった。

夜中の八時過ぎに突然チャイムが鳴り、出てみたら両親がいた。
「あんたが帰ってこんから、電話しても全然つながらんから。」と母親。
観光旅行のついでに立ち寄ってみたのだそうだ。
ああ、ごめん。悪かった。

その日はそれで分かれて、翌日ホテルで待ち合わせして、近況とか、これからのこととかいろいろ話した。しばらくぶりでお互いに緊張していたのか、最初はいまいち巧く話せなかったが、コーヒーを飲みながらしばらく探り合ったあとには、意外とすんなりうち解けて話せるようになった。

これからどうするの、と言う一番聞きたいけど聞きにくいことに答えたのが良かったのかな?
「3月で講師以外のバイトは全部辞めてきた。半年間でいろいろけりをつけて、それから仕事を探すよ。」と答えておいた。
納得するとは思わなかったが、これぐらいでも得体の知れない息子の生活の現状が知れ、さらにこの先が見えたのか、少しほっとした様子だった。

話は変わり、そういえばと教育基本法が変わったねと話をふってみた。父親は元々中学の教員をしていて、1年程前に定年退職している。
「既に実体は先取りしてるから教育基本法が変わろうともはや特筆すべきことはないよ。学校は既に変わっている。文科相からの通達を中心とした徹底した上位下達主義が浸透しているし、企業的経営、競争原理も浸透している。驚くと思うだろうけど、職員会議がないんだから。職員が集まった場で手を上げて発言しようとしたら、ここは教員の意見を聞く場所じゃない、なんて言われた。校長と教頭と、子飼い教務主任だけで決める。そしてお前も知ってるだろうけど、ともかくなんでも数値化させて、それを元に学校が評価される。校長は再就職がかかってるから必至よ。巧く立ち回れば、教育委員や、市立幼稚園の園長になれて、退職金二重取り。そんなうまみがあるとは知らなかったよ。ワシも校長になれば良かった(笑)。ほかに学級通信を出そうにも全部校長に検閲される、さらにPTAのチェックもある。そこに例の自由主義史観の連中がいれば、言葉尻を捉えて○○先生が偏向発言していたと教育委員会にすぐいく仕組みになっている。」
凄いな。そんなんなってるんだ。
「中学は選択制になっているし、高校も総合選抜はとうになくなった。お前の行ってた高校も理数科が出来たし、大学から講師を招いたりもしているみたいだぞ。
生徒はお客様。お客の満足が第一。教師はお客である生徒に奉仕するサービス業。そして教頭はデパートに研修に行く(笑)。」

「でもな、これまでは末端で反抗してもすぐに潰されるもんだから、みんな黙って従ってきたんだが少し様子は変わりつつある。たとえばいじめの数値化にしろ、そんなの無理じゃろ?やれやれいうからしかたなくやってみてどうにもうまくいかない。ある程度現場での経験をふまえて修正されざるを得なくなるはず。」とのこと。

しばらくあってないうちに、あっもいろいろ大変だったんだな。こうして話すといろいろ面白いことを聞けるし、たまには実家に帰ってみるか。